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よわい個体

言語性優位の発達障害で感覚過敏持ちの私がよわいなりに日々を生き延びる記録

苛烈な恋の話/私、推しと繋がってました

夏ぶりにアイドルおたく時代の友達が遠征ついでに泊まりにきて、死ぬほど久しぶりに昔推してたユニットの映像を見せてもらうなどした。

私はそのユニットを丸々3年間くらい推していて、おたくをはじめて1年ちょいくらいで推していたメンバーと繋がり、あとの2年は推しのおたくであり、友達であり、使いっぱしりであり、メンタル管理人だった。(※繋がりとは様々な理由でメンバーと個人的に連絡をとれるようになってしまったおたくのこと。メンバーと交際しているおたくを指すこともある)

その頃の私の生活の中心は推しで、心の真ん中にもずっとずっと推しがいて、一生だいすきで死んでも側を離れるもんかと思っていた。推しが「あなたが近くに住んでたら楽しいからこっちに来て」と言ったから東京に仕事を見つけて上京したし、推しのマンションの徒歩5分の距離に住んだ。内見には推しも付いてきた。

とにかく頭がおかしくなるくらい好きで、どんな無茶も聞いた。推しから何か頼みごとをされる人という役割にしがみついて、その役割に依存した非常に不健康な間柄だったけど、推しが倒れて緊急入院したとき推しは連絡先に私の携帯番号を書いたくらいなのでたぶんそれなりの信頼関係があったんだと思う。推しは気まぐれに「いま世界であなたのことを一番信頼してる」などと言うこともあった。ちなみに、私が推しに言われたなかで一番エモいセリフは、恋多き女だった推しから言い寄られている男の話を聞いた後に言われた、「今度の彼はあなたに似てるから、ちゃんと好きになれると思う」である。言われた瞬間の、虚しさと痛さと悔しさと嬉しさの入り混じった何か大きな塊でぶん殴られたような感覚はいまもわりと鮮明に覚えている。

推しと連れ立っていろんなところに行った。夜の街で遊んだし、推しを好きという業界の男の子たちと戯れもした。推しは「この子めっちゃ可愛いでしょ!」と私を引き回したけど、どう考えてもブスめの一般人でしかなく、そのたび居た堪れない空気が漂った。海外旅行にも行ったし、おたくとしてイベントに参加したあと車を回して推しを家まで送ったりもした。互いの部屋を行き来して、合鍵を持ち合い、それぞれの部屋にそれぞれの吸う銘柄の煙草を置いてもいた。

強めの化粧をして、髪を巻いて、ヒールで推しの隣に居るのは楽しかった。お酒を飲みながら互いの煙草に火をつけあって笑う私と推しを、誰でもいいから鮮烈な映像として目に焼き付けて、いつまでも覚えていてほしいと願っていた。
でもそうやって推しの隣にいた私は、どの瞬間も真に私らしい個性を手放した姿で、そうして推しにふさわしい強いキャラクターを装わないと心が保たなかったのだろうなといまになって思う。

私は当時から自己肯定感を健やかに育てられてないマンだったので、推しとおたく出身の友人という、明確に「上」と「下」がある関係性にどっぷり浸かり「下」である自分に安心しながら、同時にいつも不安で怯えていた。推しがふっかける無理難題のうちひとつ、推しに返す言葉のうちひとつでも間違えれば即座に推しに捨てられるのではないかという怯えがあった。私が私に正しく価値を見出せていたら、もしかしたら推しと対等な友人関係を築けていたのかもしれない。いつも卑屈に怯えていた私は、推しにとってはさぞ面倒臭かっただろうなと思う。推し自身が相当な変わり者で、扱いが面倒臭い人物であったことも間違いないのだけれど。

推しがユニットを脱退して、私も現場から他界(おたくを辞めること)したころには、もう推しとの関係にも推しへの気持ちにも振り回されて疲れ切っていて、推しからの着信に出られなくなっていた。私は死ぬほど泣きながら、当時普及しはじめていたLINEで「もう会いたくない」と絶縁宣言をした。返事を待たずに推しをブロックし、削除した。勤めていたブラック企業を辞めて、少しのあいだ精神科にも通って、大阪に帰った。

総額何万円かけたか分からない推しとのツーショットポラを収めたファイルはガムテープでぐるぐる巻きにして捨てた。ただゴミ袋にぽいと入れて捨てるには執着がありすぎて、でもハサミで1枚ずつ切り刻むのは推しの顔がやっぱり好きで出来なくて、我ながら芝居がかったことをするなぁと思いながら、泣きながら笑いながらガムテープでぐるぐる巻きにして、捨てた。

私は推しと繋がってからも優秀なおたくを貫いた。推しのラストステージには企画を立てて、アキバのドンキホーテに電話して推しカラーのサイリウムの在庫を300本くらい抑えて、当日の来場者に配ったし、点灯タイミングの指示もした。推しの脱退と同時に潔く現場を去った私は、元々有名おたくだったのもあって未だに現場では「知る人ぞ知る」存在らしい。うける。

推しと縁を切って1年ほど経ったころ、見覚えのないアドレスからメールが届いた。LINEに移行する前に推しとやりとりしていたアドレスだった。「あなただけが私に優しくしてくれたのに、優しくできなくてごめんなさい。また仲良くしてくれたら嬉しいです」と書かれていたけど、私は残念ながらそのメールに対して「怖い」という感情しか抱けなかった。はじめの頃は他愛もないメールが一通届くだけで天にも昇る心地だったのに。その後も忘れた頃にメールは届いたけど全て無視した。もう推しを好きではない私は、推しが求める優しさを渡してあげることができない。

久しぶりに推しの映像を見て、本当に色んなことを思い出した。振りコピ勢だった私は未だにほとんどの振付を覚えていたし、推しが脱退したあとの映像では別のメンバーが歌う場面で「ここ推しの歌割りだったよね?」と自分でも驚くほどすぐに気づいた。

推しは破天荒で無茶苦茶で、歌もダンスもびっくりするくらい下手で、でも私は推しをアイドルとしてちゃんと好きだった。ツアーを全通して、最前列でサイリウムを振らないと気が済まないくらい、お金を積んでツーショットポラを撮らないと苦しくて死にそうになるくらい、レス(ファンサのこと)が来なかったり他のおたくにレスしてるのを見ると嫉妬で狂いそうになるくらい、アイドルとしての推しを好きだった。繋がっててもレスはほしいのだ。推しに振り回された年月は、たぶん間違いなく私の人生でマイナスで無駄な時間だったけど、あれだけ苛烈で鮮やかな恋は、もう二度と出来ないと思っている。

(いまの私は、恋愛感情というものは全て「気のせい」なんじゃないかと思うようになっているし、認知されるとロクなことがないから他のあらゆるアイドルをはじめとする現場に手を出さないようにしている。認知されてロクなことにならなかった出来事は、この推しの件以外にもあとふたつほどある。そのうちブログでネタにする)

 

私はアイドル【百合プレイリスト15曲】

学生時代の友人で、ものすごく顔の美しい女がいる。(美しすぎて、小説に書いてしまったくらい美しい顔をしている。北欧系のハーフと言われても納得してしまう日本人離れした顔立ちと長身だが、純日本人だそうだ)


彼女が言った、「いまの日本で若い女がいちばん簡単に就ける職業は、アイドルだ」という言葉が忘れられない。彼女曰く、名乗りを上げてSNSのアカウントさえ作ってしまえばどんな女もアイドルにはなれるそうだ。全く活動をしていなかろうが、アイドルと名乗れば必ずどこからかヲタが湧いてきて推してくれると。それは彼女自身が長くアイドルとして活動している実感から来る言葉だったんだろうか。彼女のCDはいまもタワーレコードの棚に刺さっている。

 

さて、私もまたアイドルだ。

 

いきなり何言ってんだこいつと思われるかもしれないが、私にもアイドルとして活動していた時期がある。活動、というか、趣味程度のものだけれど、カラーパニエを履いて客前でライブもしたし、代々木公園で路上ライブもした。アイドルを自称しながらその実、文芸ユニットのようでもあったので、作る本の打ち合わせをUstreamで配信したりもした。友達とふたりで作ったユニットは解散した覚えがないので私は現役のアイドルということになる。レズビアンの友人と組んだそのユニットは、そのまんま「レズビアン・アイドルユニット」がテーマで、百合読みできるJPOPをカバーして歌う。片手で足りる人数だけどファンもいたし、「(ユニット名)の、みみこさんですよね?」と顔がさしたこともある。

 

容姿の美醜に関して、私は昔からずっとずっと考えすぎている。いつかまとめて文章にするすると言い続けているけど、未だに書けていない。書けていないということが悔しくて情けないけれど、いつまでたっても美醜問題は私の中で言葉がバラバラとしていて、まとまってくれないのだ。

 

私の中には「私は美しい」という自負と「私は酷く醜い」という真逆の認識が、それぞれ同じ大きさの事実としてせめぎあっている。
「私は美しい」という肥大した誤解を「そうでもない、まぁだいたい中の下くらいのルックスだよ君は」と、宥めるのは比較的簡単なのだけど、「私は酷く醜い」という思い込みは余りにも強固に私の中で「事実である」と居座ってしまっていて、どうにも退かすことができない。「酷く醜い」を退かすためにことさらわざと「まじ私可愛いワァ」などとfacebookに自撮りをアップすると、「やっぱり私は美しいのね!」と、先ほど宥めた「美しい」が息を吹き返して、呆れるほど何もかもが元通りになってしまう。

 

「美しい」「いや酷く醜い」という両極端な誤解だか事実だか知れない認識は、たびたび暴走して、各自の方向に私自身をえいえいと引っ張る。ちょうど両手を掴まれて逆方向に思い切り引っ張られるのに似ていて、いっそ早く真ん中から裂けてしまえばいいのに、とさえ思う。だから私はいつも苦しい。

 

アイドルとして歌ったり、踊ったり、「アイドルMC」のフォーマットに則って話したりしているときはこの苦しさと無縁でいられた。「アイドルなんだから可愛くて当たり前でしょ!」という開き直りが「私は美しい」にプラスされて、そちらにばかり針が振れた結果、「私は酷く醜い」が鳴りを潜めていたからだと思う。つまり私の美醜に関する苦しさは、「美しい」か「酷く醜い」のどちらかに統一されれば楽になるということなのだけれど、それがなかなか難しい。

 

完璧に化粧をして、髪を巻いて、綺麗に着飾って、どうでもいい男の子たちにちやほやと持ち上げてもらっても、ショーウィンドウに映る遠目に見た自分の顔は、まるで饅頭に申し訳程度の皺が寄ったようにしか見えなくて、どう見ても醜い。つらい。

 

どう頑張っても解消されない美醜問題に言及するのはこれくらいにして、アイドル時代を思い出して百合みのあるJPOPを選出してみたので、百合曲プレイリストとして以下に置いておく。本当は仮想ライブのセットリストを組もうと思ったのだが、途中で力尽きたのであくまでも思いついた順番に羅列するに留めておく。アーティスト名の後ろに「★」がある曲は、明確に同性愛を歌った曲。その他は深読みで百合みを感じられる曲。

 

1.「潮騒のメモリー潮騒のメモリー
あまちゃんは百合。誰がなんと言おうと百合。ライブで実際にやりました。


2.「1/2」川本真琴
「神様は何にも禁止なんかしてない 愛してる」「ボールを投げれる強い肩 羨ましくて男の子になりたかった」。ライブで披露済み。

1/2

1/2


3.「友達のうた」倉橋ヨエコ
「どうせ叶わぬ恋ならば 私男の子になってもいいわ あなたの側にいられるなら 私死ぬまでお友達でいいのさ」という歌詞を百合読み。当時片思いしていたノンケと行ったカラオケで歌ったら「レズの歌……」と言われてびびりました。ライブでやったら間奏が長すぎて心が折れそうになった。

友達のうた

友達のうた


4.「うそつき」吉澤嘉代子
女子高生が同性の級友に片思いをしている歌。「許されないのなら いっそ あなたの恋人に抱かれたいと思った」。ちなみに私はノンケに片思い職人ですが、好きな人の男の恋人に抱かれるより、せめて好きな人が男とセックスしてるところを見せてほしいと思う派です。寝取られ?

うそつき

うそつき


5.「軒下のモンスター」槇原敬之
マッキーのカムアウトソング。「好きになる相手がみんなと僕は違うんだと」
いつかライブでやりたくて振付まで考えてあります。

軒下のモンスター

軒下のモンスター


6.「きらめくかけら」林原めぐみ
恋する人に出会って、本当の自分に気づいた喜びを歌い上げる可愛い曲。女子中学生百合のイメージ。「ふたり夢中で駆け出したアスファルトの上 飾りを全部脱ぎ捨て」

きらめくかけら

きらめくかけら

  • 林原 めぐみ
  • アニメ
  • ¥250


7.「LOVE & HATE」バニラビーンズ
歌い手である女の子が「可愛い恋人」に甘えたりちょっと意地悪したりして翻弄する曲。普通に聞けばヘテロのラブソングなんだけど、百合読みできます。

LOVE&HATE

LOVE&HATE

  • バニラビーンズ
  • J-Pop
  • ¥200


8.「ニコラ」バニラビーンズ
歌い手の女の子が、「ニコラ」という人に別れを告げる曲。ニコラが男性と女性どちらでもある名前なところがポイント。「愛し方も知らず でも愛してた いやになるくらい」声を張らないバニビの曲は、ウィスパーボイスで上手に歌うユニットの相方が得意そうなので多めに選曲。

ニコラ

ニコラ

  • バニラビーンズ
  • J-Pop
  • ¥200


9.「気になるあの娘」相対性理論
「気になるあの娘の頭の中は ふつう ふつう 割りと普通」「恋する心を止めないで」
「あの娘」のことが気になって気になって仕方ないらしい曲。JK百合読みできます。

気になるあの娘

気になるあの娘

 

10.「あの娘の彼」小島麻由美
「あの娘のことは好きだけど あの娘の彼は嫌いなの あの娘はそのことに気づいてない 彼のことしか見てないからね」片思い嫉妬百合。身に覚えがありすぎます。

あの娘の彼

あの娘の彼

 

11.「会いたくて」谷山浩子
最高に切ない「会いたい」ソング。これはもう個人的に好きなのと、個人的に歌いたいだけですごめんなさい。ノンケに片思い職人が選ぶ珠玉の「会いたい」ソングなのでもう百合ってことにしてください。

会いたくて

会いたくて

 

12.「禁じられた2人」AKB48 team K ★
言わずと知れたAKBの百合曲。「罪は女同士」「どうぞ叶わないこの恋を許してね」と、ステレオタイプな、ともすればアレルギーが出そうな古い百合。心中します。

禁じられた2人

禁じられた2人

 

13.「夜明け」ジムノペディ
「あなたは綺麗な女の子、そうなの、私がいけないの」「最後のくちづけはもっと、私の可愛い恋人」これも心中百合。歌謡曲の百合は死にがち。

夜明け

夜明け


14.「愛の讃歌」越路吹雪
「なんにもいらない あなたとふたりで生きて行くのよ あたしの願いはただそれだけよ」これは単純に越路吹雪岩谷時子の関係性がいいなっていう。

愛の讃歌

愛の讃歌

 

15.「GOLDの快感」ベッド・イン
「悩ましげにつくため息 トパーズに変えて セクシャルな夜に飛び込め 宝石(ジュエル)が弾け飛ぶの」「もっと 気持ちいいこと しようよ」私が大好きな80年代風バブル地下アイドル、ベッド・インの曲。ヘテロセックスの歌かなとは思うけど、性に主体的なかっこいい女ふたりの歌なのでもう百合でいいじゃない。パワーボーカルな私が歌いたいのもあって選曲。歌い上げたら気持ち良さそう。

GOLDの快感

GOLDの快感

 

 

女モテしない私

今回はセクシャリティの話。

 

先日、記事に男の人と付き合ったものの2週間で振られたという爆笑案件のことは書いた。
付き合った期間が2週間ではあったものの、他人とお付き合いをするのが実に12年振りであったため(人としてやばい)、浮かれポンチで周囲に報告したところ、報告した全員からもらった言葉がある。

 

「えっ、男で大丈夫なの?!バイだったっけ?!」

 

私は大々的にカムアウトしてるわけではないけれど、基本的には女性に恋をする。カムアウトはしてないけど、特に隠してもいない。


10代のはじめには自分でそれに気づいていたし、長年レズビアンと名乗ってきた。ネットに顔出しでレズビアンとして話をしたこともあれば、イベントに登壇してトークをしたこともある。

 

「お付き合い」のブランクが12年もあるのは、ノンケ(異性愛者)の女の子に片思いをするのがもっぱら私のデフォルトだったからに他ならない……と言いたいが、それに加えてレズビアンの女の子に恋をして告白してバッサリ振られたことも何度もある。いっそ実らないことが前提の恋がしたくて、数年間女性アイドルにガチ恋を捧げた時期もあった。つまり絶望的に女にモテなかっただけの話だ。つらい。

 

12年前に初めてお付き合いをしたのは男の子で、その経験があるからこそ「自分はレズビアンとは言えないのでは……」とそれなりに悩んだりもした。
女らしい格好をする方が好きなのに、というか極度の少女趣味であるのに、女が好きというからには男っぽい格好をしなければ、と金髪のベリーショートに膝の抜けたデニムにスニーカーを履いていた時期もある。思春期レズにありがちな迷走といえよう。

 

学生時代に男の人を好いたこともある(以前記事にしたいまはもういない人だ)。
先日嵐のように去っていった2週間の人も男性だ。且つ、昔からの知人男性とほぼ身体だけの関係にもなっているし、久しぶりに会う男の子から執拗に誘われもした。ここ1ヶ月ほどでいろんなことが起こりすぎている。

 

たぶん私は、モテない(求められない)ことに飽きてきたんだと思う。

 

というのも、12年間この身に何もなかったことが物語るように、私は女が好きなのに圧倒的に女にモテない。
少し前まで当然のように世間に蔓延っていたレズビアンに関する言説のうちのひとつに、「レズは男にモテないから女に走っている」というものがある。そんなわけあるかバーカ、としか言いようがないが、私に限ってはこの逆だ、ということに気がついた。

 

レズビアンの女の子と出会って(ノンケに惚れることも多々あるけど)、恋をして、それが叶うことよりも、男性から性的に求められ、それに応えることの方が私には100倍簡単だった。私の容姿がヘテロ男性に好まれやすいものだったせいもあると思うけど。(余談だが、レズビアンのイベントやバーに行くと必ず「見た目ノンケっぽーい!」と言われる。ゲイバーでも言われた。あれなんか疎外されてるようで地味に傷つく)

 

勿論、気持ちの交流や関係性の構築を伴わずに「やりたい」という性的欲求を示されることが「モテている」とは言えないことは分かっている。そこを「求められてる」と履き違えると後はもうネガティヴヤリマンの道へまっしぐらなので気をつけたい。

 

ただ、私は男と寝られるということが分かった。男と楽しく寝られるし(どっちかというと性欲旺盛なドスケベであるということもわかった。セックスは楽しいし、定期的に寝る相手がいるということは私の心に少なからず安寧をもたらす)、交際も出来ることを理解したうえで、やっぱり心が恋するのは女の方だということを再確認した。死ぬほど女モテしないけど。あといま思いついた恐ろしい仮定だが、私は自分の恋が実らないことを恐怖するあまり、より成就率の低い方を無意識に選んでいるのかもしれない。だとしたら私は恋愛に向き合うことさえ出来ないヘタレだし、相当アホだし、そりゃ幸せになれんわいと思う。

 

「普通」は逆なんだと思うけど、私は男の人と付き合っているとき世間に対して後ろめたさがあった。結婚や出産という、ヘテロセクシャルのカップルが何の疑問もなく享受している不公平な制度やイベントやサービスに、もしかしたら乗っかれるかも知れないと思うと罪悪感で非常に居心地が悪かった。独身の人と真っ当にお付き合いをしているときは罪悪感で夜中に吐きそうになるのに(2週間で振られるけど)、女の子を多頭飼いしてるらしい既婚者の自称・ひどい男と寝ているときはそれが全くなかった。私の国の倫理観はどうなっているんだろうか。

 

ぐるぐると色んなことを考えて、結局、好きな人がほしいな、と思った。
とりあえずレズビアン向けのマッチングアプリをiPhoneにインストールしてみた。女モテしないのはもう分かり切ってるけど、それはそれで、その時はその時。

かわいこぶる

ブログを更新してない間に何してたかっていうと男の人たちと遊んでました。干支が一周するほど恋愛市場から逃げ回ってたくせに、いっぱしのビッチ発言。その話はこの記事のあとの方に出てきます。

 

世界中の誰にも嫌われたくない、という私の話。あと「可愛くあること」について。まだ綺麗なオチはないです。

対峙する相手に嫌われないために、ほぼ無意識下で相手が求めているであろうキャラクターをいつも演じている。なにより私は人に嫌われることが怖い。特別に好かれなくてもいいから、最低限嫌われたくない。ほんとうは好かれもしたいけど、そういうことにしている。好かれることより、嫌われないことの方が少し簡単な気がするから。

演じているキャラクターと、本来の自分に齟齬が生まれて、だんだん演じていられなくなって、いつも疲れてしまうということについ最近気づいた。相手に合わせるという意味でもそうだし、自分の感情をみんな後回しにするのでひとりになったときにしわ寄せがどっとくる。私だって不機嫌な顔をしていたいときもあるし、口を利きたくないときもあるし、棘のあることを言いたいときもあるし、八つ当たりだってしてみたい。でも私は「怒り方」を、知らない。喧嘩の仕方も知らない。不機嫌な顔をすると親にすごく叱られたから、未だに私は不機嫌な顔をして誰かに叱られるのが怖い。自分の機嫌は後回しで、相手(親含む)に不快感を与えないことが私の最優先事項だ。

「いつでもツッコミ待ちのボケキャラ」とか、「貶されOKのいじられキャラ」とか、「語彙豊富なインテリ口撃キャラ」とか、「何も考えてないアホキャラ」とか、「自分のこと可愛いと思ってるぶりっ子キャラ」とか色々ある。付き合う人の数だけキャラがあるから、それはもう色々ある。でもわりと、誰かの「下」に潜り込んで笑いを誘う自虐&他虐OKなお調子者になることが多い。本心ではそのポジションでネタキャラを演じてやってると思ってるからこれ系はストレスも大きい。でもいろんな局面で需要があるから、演じる機会も多い。

あとこれは自分でもどういう仕組みかよく分からないのだけど、どうやら私は男の人の前で「可愛い女の子」を演じるのがすごく好きらしい。先日、ある男の人から好きだ好きだと乞われまくってお付き合いを始めたら「価値観が合わない」とたった2週間で振られるという爆笑案件があったのだが、この彼の前で私は「可愛い女の子」を演じまくった。というのも、この彼は何より私の「可愛い見た目」をとても気に入っていた。実際の私が可愛いかどうかは一旦置いといて、彼の目に映る私はどうやら特別に可愛かったらしいとだけ書いておく。
なので私は、求められるキャラクターは「可愛い女の子」だなと判断してひたすら可愛い女の子を演じた。ただ彼に喜んで欲しかったから。小首を傾げて見つめたし、アヒル口も辞さない構え、待ち合わせ場所で彼を見つけたら小走りに駆け寄ってえへへ、と笑いもした。お酒を奢ってもらったら、わざとトイレで濃いめにチークを塗り直した顔でぽやっと目元をゆるめながら、両手で持ったお財布を口元に掲げて「いくら?」と聞いたりもした。酔ってもないのに。

正直それがめっちゃ楽しかった。2週間のお付き合いそのものより、可愛い女の子を演じるのが何より楽しかった気がする。それはきっと「可愛い振る舞いが許されている」と感じたからで(私は自分に「可愛い」を禁じている部分がある)、これはたぶん私の中の根深い美醜問題と関わってくる。また別に記事を書きたい。

結局、私が演じた「可愛い女の子」の部分と本来の私が持っている、例えばジェンダー関係の地雷が多いところやひどく理屈っぽいところのギャップが大きくて「価値観が合わない」と言われてしまったのかな、と思っている。何せずらずら言い訳の書かれた長いLINEが来たっきり、話もせずに別れてしまったので真相はもう誰にも分からない。そこには「未練を引くといけないのでもう一切連絡はとりません」とまで書かれていて、そこまで自己完結している人に何を言っても無駄だと思ったし、下手に何か言って余計に傷つけられるのが怖かったし、何よりも私自身がそれなりに混乱していて、何かひとつでも上手いこと返せる気がしなかったのだ。ただ、「未練を引く」って変な日本語だなとは思った。未練は「残る」もので、引かれるのは後ろ髪では?と思ったけど結局何も言わなかった。

この2週間の彼と付き合う前に、知り合いの男の人と何故かいきなりやらしい関係になった。こちらの彼は随分年上で、やっぱり私のことを可愛いと思っているようだったので、この年上の彼に求められていたのは「年下の可愛くてやらしい女の子の友達」だったのかなと思っている。尻が軽くてスケベで、いちいち恋愛感情を持ち出すほど馬鹿じゃない、頭と物分りのいい女の子。これが正解かはわからないけど、それを演じるのもまためちゃくちゃ楽しかった。何せこの彼は年上なので、現在27歳の私が、本来なら22歳以下の可愛い女の子にしか許されない類の可愛い振る舞いをしても許されるのが、それはもう楽しかった。なんとなく過去形で書いたけど、この彼とは今後もずっと知り合いで、まだ会う機会もあると思うのでたぶん今後もずっと若くて可愛い女の子を演じさせてもらう予定。

しかし書けば書くほど私の歪みが強調される気しかしない。私も自分でこの人が結構心配だ。

私は、自分が「可愛くあること」に対してかなり厳しい。先にも少し書いたけど、どうにもならない美醜の問題を私はずっと抱えていて、これに関してはもう死ぬまで苦しむ覚悟をしている。
でも、ここ1ヶ月ほど男の人たちの前で思うさま「可愛い振る舞い」をしたことで、更にそれを心底楽しんだことで、「可愛くあること」への自罰的な感情が少しだけ弛んだ。それだけでも儲けもんだと思うことにする。

何も考えずにずらずらっと書いたので、これが私以外の人が読んでちゃんと面白い文章になってるかさっぱり分からない。つまんなかったらすみません。

最後に私の生涯のテーマソングである吉澤嘉代子の「美少女」のMVを貼っておきますね。

 

恋がしたい  恋がしたい

これまでの過去を許せるような

 

恋がしたい  恋がしたい

美少女になれたなら

美少女になれたなら

 

吉澤嘉代子「美少女」MV - YouTube

 

コンプレックスの話

※この文章に出てくる「君」は全てこのブログの書き手=私のことです。自分の話ばっかり聞いてほしいくせに自分のこととして素直に書くのが苦手な私は、よく存在しない第三者をでっち上げて、私のことを「君」として語ってもらうのです。


今日はコンプレックスの話をしよう、君の抱えるコンプレックスの話を。
病的なほど自己肯定の低い君は、コンプレックスなんて数え切れないほど持っているけど今日はそのうちのひとつ「肌」の話をしよう。

君はアトピーを患っている、生まれたときからもうずっと。小児アトピーは大人になれば自然に治るというけれど、君の場合小児アトピーがそのまま成人のアトピーに移行した。数年前に改めて受けた血液検査では、アレルゲンに反応する数値だったかが健常な人の200倍という、わりとありえない数字を叩き出した。医者からは「まぁまぁ悪いアトピーですね」と言われた。

幸運なことに、顔にはあまり湿疹が出なかったし皮膚を掻き壊して色素沈着を起こすこともなかったので、案外君のアトピーは他人からは気付かれにくい。
しかし肘の内側、膝の裏、鼠蹊部や首には湿疹が出ては治まりを繰り返し、何度も掻き壊した結果の色素沈着と色素の抜けがいくつもある。右の脇腹から鼠蹊部にかけては広範囲にレーザーでも消せない色素沈着が散っている。注意して見なければ分からないけど、首にはぐるりと一周白く色素の抜けた線が走っていて、それを見つけた君の昔の恋人は、首を切り離された跡のようだと言った。

今でこそ、ぱっと見ではアトピー患者であることが気付かれにくい君だけれど、一時は道行く人が君を見るとぎょっとしてから思わず目を反らすほど肌の具合が悪化した時期もあった。中学の2年から3年にかけてのことだ。

思春期と呼ばれる年頃、残酷なことを言うようだけれど君は決して美しい少女ではなかった。でもそれを気にしていたのは、君自身ではなく君の母親だった。

君の母親は目鼻立ちのはっきりした自分に似ず、小さな目鼻の地味な顔立ちの君を心配していた。アトピーが治ればもう少し見られるようになると思ったのか、君の母親は実に微妙な民間療法に手を出した。

酸性水を全身に浴びせるという、少し考えれば絶対肌に良くないことがわかるその民間療法を、それでも君の母親は信じて日に2回、君の全身に強酸性水を噴射した。

君の全身の皮膚は爛れ、ずるりと剥けたように真っ赤に腫れ上がった。ひび割れたような分厚いかさぶたに覆われ、そこから血と膿とリンパ液が滲んで熱をもつようになった。

ステロイド剤を使っていた時間が長いほど好転反応が強く、長く出るというその民間療法は、約1年間続けられた。
首の皮膚が特にひどく爛れ、夜も眠れないほど痛んだ。痒みもひどくなり、患部を触らないようにと君の首にはいつもガーゼが貼られることになった。伸ばしていた髪を巻き込んでリンパ液と一緒に固まって貼り付いてしまうので、君は伸ばしていた髪を短く切った。

娘を美しくてあげようという母の思惑とは裏腹に、肌の爛れた君は以前より自分のことを醜いと感じる時間が増えていった。
爛れたところから滲むリンパ液はひどく生臭く、君を憂鬱にさせた。強酸性水を浴びた頭皮も顔も赤く爛れて腫れ上がり、瞼が腫れて君の小さな目は更に小さく、顔の余白は広がって見えた。

君は軽い鬱状態になり、部屋で鏡を割った。それは小さな手鏡から始まり、学校に持っていくための折りたたみの鏡、壁掛けの鏡と続き、とうとう姿見を倒して叩き割ったところでやっと君の母親は、君に強酸性水を吹き付けることをやめてくれた。

連れて行かれた皮膚科で「お嬢さんの肌はいま、全身ひどい火傷を負っているようなものです。強酸性水アトピーを治す力はありません」と告げられたとき、君は母親への怒りと脱力と、もうあの水を浴びずに済むという安堵で思わず泣いた。母親がどんな顔をしていたか、君は覚えていないという。
それから何年も経って、その頃のことを話すと母親は「いくらお金がかかったと思ってるの?ママはミミちゃんのこと綺麗にしてあげようと思ったのに」と言ったので、君は母親に期待するのはよそうと思った。君は何度絶望しても、つい母親に期待してしまう癖がある。それは「娘」という病のせいだと、君は思っている。

酸性水地獄から抜け出した君は、病院の処方薬で爛れた肌を治し始めた。あの水を浴びていたのは1年間ほどだったのに、浴びる前の肌に治すのはたっぷり高校の3年間を費やした。その間に君は男とのセックスを覚えたりもしたけれど、服を脱いで肌を晒すのはいつまで経っても嫌いだった。ついでに君は高校でそれはもう物凄くひどいいじめに遭っていたので、ストレスでアトピーは悪化したし、なんなら円形脱毛症にもなった。

高校生の君には憧れていたものがあった。
健やかな皮膚を持つ女の子の膝裏だ。こう書くと余りにもフェチズムの匂いがしてしまうけれど、それは君にとってなぜか強い憧れを抱かせた。
制服のプリーツスカートの裾と、紺色のハイソックスの間に見える、健やかな皮膚の膝裏には、アルファベットのHのかたちをした皺が刻まれていた。湿疹も爛れもかさぶたさえなく、白くて血管を透けさせているHの刻まれた、女の子の膝裏。
登校中に長い坂を登りながら、君はいつもそれを羨ましく見上げていた。
当然のことながら、君の膝裏はかさぶたと湿疹と色素沈着に埋もれて、Hも血管も見えなかった。

地道に薬を塗り続け、なんとか君の肌は復活した。目立った湿疹は起こらないようになり、身体中にあった傷口はふさがった。
それでも君には自分の肌を恥じる気持ちがあった。いくら傷がなくなっても、君の肌は健やかな女の子の肌に比べれば油分も水分も段違いに少なく、撫でればざらざらと違和感ばかりが手のひらに残るものだったから。
君にとって女の子の健やかな肌は、焦がれても焦がれても手に入らない憧れと憎しみが塗り込められているように、いつだってうっすらと光って見えた。実際に適切な水分と油分を含んだ女の子の肌は太陽をはね返して光るのだ。一方、君の肌を光らせるのにはワセリンの混ざった軟膏が必要だった。手のひらにとって腕や足にひろく塗り伸ばせば、一応光をはね返しはしたが、触れればべたべたと不快で、君はいつも誰がこんな肌触りたいもんかと苛立った。

 

しかしここ数年で君の肌は随分きれいになった。美容皮膚科を併設している皮膚科に通うようになったからだ。それまでに通っていた皮膚科では「湿疹を治す」ところまでしか相談にのってくれなかったけれど、君のいま通っている美容皮膚科では「健やかな肌に近づける」ための治療をしてくれる。君は3ヶ月に1回そこに通い、眠っている間に身体を掻き壊さないための痒み止めの飲み薬と、全身にくまなく塗りこめるためのヒルドイドローション、それから湿疹が出てきてしまったときの強いステロイド剤と、湿疹が治りかけたら使う弱めのステロイド剤、顔や目の周りに塗るための薬をそれぞれ山のようにもらってくる。

何種類もの保湿剤やオイルを駆使して君はいまの肌を保っているけれど、本当に健やかな女の子の肌には一生追いつけないことに気づいてもいる。どれだけ手をかけても、しょせん偽物にすぎないと思いながら、それでも君は今日も肌を撫でる。健やかな肌に近づけることで、誰かに許してもらえる日を待っている。

死んだ人の話

死んだ人の話をしましょう。

その人は学生時代に講義をもっていた講師の方で、本業は劇団の主催で劇作家で演出家をしてる人でした。Aさんとしましょうか。

Aさんは私たちに劇作法を教えてくれていて、私はそのあまりにオリジナルな劇作と演出のメソッドに夢中になりました。
私はAさんの講義がめちゃくちゃ大好きで、何をおいても必ず出席していたんですが周りの子たちはそうでもなかったみたいで、最高に人がいないときなんかAさんは私含め5人ほどの学生の前で講義をしていました。毎回短い戯曲を書いて提出する課題が出ていたんですが、全ての課題を提出したのは私ひとりだったのを覚えています。

前期の講義最終日、Aさんは打ち上げを提案しました。来られる人は来なよ、と言って集まったのは私と、もうひとりB子という学生だけでした。
大学近くの居酒屋で、Aさんと3人でささやかな打ち上げを行いました。B子は全くお酒を飲まず、私ひとりAさんと競うようにお酒を飲みました。「バスがなくなっちゃうから」と先に帰ったB子を見送って、Aさんと私はだらだらと話しながら終電前まで飲みました。

Aさんは典型的な才能あるクズ男で、聞いてもないのに自分がどれだけ女性にもてるかという話をしていました。Aさんには奥さんがいて、バツイチで、今の奥さんが前の奥さんからAさんを奪った形の略奪婚で、しかもまだ他に彼女が何人かいるということでした。
しかし実のところ、私も当時Aさんに惚れていたのでそりゃまぁもてるだろうと思いながら聞いていました。

Aさんは全く格好良くありませんでした。ただ、ある種の女だけを強烈に惹きつける電波か何かが出ている種類の男の人だったのだと思います。そして私はその電波をキャッチする類いの女だったというだけのことです。

Aさんの演出法はとにかく役者を精神的に焦らすやり方で、私はそこに果てしないエロみを感じてすっかり参ってしまっていたのでした。Aさんのやりくちがどれだけエロいかと私は学友に何度も力説したのですが、私の説明が悪いのかさっぱり誰からも賛同を得られなかったのを覚えています。

当時私はまだ子供でしたので、もう顔から身体から「Aさん好きです」がダダ漏れていたのでしょう。Aさんは店を出る直前に「俺ね、あなたの書くホン好きだよ」と言いました。私はもう、めろめろに参らないわけにはいきませんでした。(文系をこじらせた私に効くセリフは「頭がいい」と「文章がうまい」です)ああもうこれ完全にやられたい、と酔ってくるくるする頭で思った記憶があります。
しかし当時の私は、小猿のような金髪のベリーショートに膝の抜けたジーンズなんかを履いた、個性的を履き違えたやばめのメンヘラだったのでAさんもさすがに手を出してきませんでした。懸命な判断だと思います。

駅まで手を繋いで歩いて、別れる前にキスをした。私とAさんの間にあった、それが全てです。
その後長い夏休みを挟んで私はしばらく恋と尊敬のマーブルな感情に苦しむのですが、それどころじゃない情報がミクシィ経由で入ってきました。Aさんが治らない病気になった、というものでした。

手が届かないところに行くんだなぁ、と思ったのを覚えています。私が好きだって言うとか言わないとか、そんな次元の話じゃないやと。メンヘラだったので病んだ日記を何度か書いて、いつの間にかAさんから友達削除されていました。懸命な判断だと。

Aさんが退院して新しく芝居の公演を打ったのを観に行ったのが、Aさんに会った最後です。何年前になるんだろう、あの日着ていた服は思い出せるのに、いつのことだったかはよく思い出せません。

白黒チェックの襟の小さなブラウスの上にグレーのスウェットパーカーを重ねて、黒いプリーツスカートを履いていました。足元は黒のエンジニアブーツ。髪はパッツンのボブに伸ばし、色もブラウンに落ち着いていました。金髪ベリーショートよりは多少やれる見た目になっていたのではないかと思います。

終演後のロビーでAさんとベンチに座ってほんの少し話したことは覚えているのですが、何を話したかは覚えていません。意外とそんなものです。私はもうその頃にはAさんをそれほど好きではなかったし、何よりAさんがめちゃくちゃ痩せていたことにびびってしまっていたのでした。

最後に話したことも覚えていないAさんのことを、なぜ今更長々書き連ねているのかというと、Aさんが数年前に死んでいたということをつい先日知ったからなのでした。

古い知人に会ったときのことです。
話の流れで「私、既婚者の狡いおじさんに参っちゃったことならもうあるの」とAさんの名前を出すと、彼は「Aさんね、亡くなったよね何年か前に」と言いました。私は「あ、死んだの。やっぱり」とだけ言いました。彼は重ねて「なんかごめん」と言いましたが、私は本当に何の感慨も抱かなかったのです。

また別の日に、この知人と話していたとき私が「あなたはさ、」と呼びかけると彼は「書き言葉の国の人?会話で二人称が『あなた』なんて黒柳徹子くらいだよ」と笑いました。実際私はポエミーで叙情的な書き言葉の国の人だし、黒柳徹子とお揃いで発達障害でもあるんですが、実際のところは、彼の名前が既に私にとって違う情報と結びついてしまってるので、彼を呼ぶ名前を持ってないというだけのことなのでした。

しかしこの「書き言葉の国の人」という言い回しが案外気に入り、ひとりの部屋でふんふんと反芻していたときふいに思い出したのです。

「俺ね、あなたの書くホン好きだよ」

Aさんも間違いなく、書き言葉の国の人でありました。いつの間にか、影響を受けていたんだなぁと思ってから、そうかAさんの書く不思議なリズムの台詞もエロみ溢れる演出も、もう二度と新たなものは世に出ないのかとやっと思い至り、それは確かに寂しいことだ、と思いました。

死んだ人の話を終わります。

 

【小説】アイドルと女ヲタの百合

 フィクションっぽいっていうか昔に書いた小説。

 

yukihiroX@峯田凛ガチ恋

【せーとも接触@Eモール①】

俺「りんりん!結婚しよ!」

凛「ゆっきーが石油王になったらねww」

俺「まじで!ちょっと帰って庭掘るわ!」

凛「がんばって^^」

#せーとも #峯田凛 

 

yukihiroX@峯田凛ガチ恋

【せーとも接触@Eモール②】

俺「石油出なかった!」

凛「うっそだぁww」

俺「結婚できなくてもいいからりんりんちゅーしよ?」

凛「無茶振りだーw」

俺「まじでまじで!しあわせにするしちゅーしよ?!」

凛「支離滅裂だよww」

#せーとも #峯田凛

 

yukihiroX@峯田凛ガチ恋

【せーとも接触@Eモール③】

俺「りんりん!ちゅーー」

凛「出たーwwもうやだぁww」

俺「今日これ最後だからまじでちゅーしようぜ~」

凛「じゃあ今夜、夢の中でねww」

俺「ここで寝ていいかな?」

凛「帰ってwwww」 

#せーとも #峯田凛

 

りんりーん、夢で待ってるぅぅぅ、と叫びながらパーテーションの裏に消えていく【ゆっきー】を見送って、凛は漏れそうになるため息を奥歯で噛み潰した。

白いシャツにグリーンが基調のレジメンタルタイを締め、紺色のプリーツスカート、黒いタイツ、ブラウンのコインローファーにややオーバーサイズ気味のピンクのニットを着た彼女は、アイドルバンドユニット「制服の友」略して「せーとも」のベースと妹担当・りんりんこと峯田凛である。

 

今日は新曲のプロモーションを兼ねたイベント……ショッピングモールのイベントスペースに作られた低いステージでのミニライブと彼女の苦手な握手会……だった。

 

男の人って、ていうかヲタって、勝手だ。冗談に混ぜ込めば、いくらでも自分の欲求を押し付けていいって思ってる。普通に考えて「ちゅーーー」とか言いながら唇つきだしてくるなんてめっちゃ気持ち悪いし暴力だと思うんだけど。お金貰ってるから仕方ない、のかな。そのお金だって直接私に入るわけじゃなくて事務所とかいろんなところに抜かれてるんだけど。

 

ていうかお金払ってるにしても要求高すぎじゃない?なんでここまでされなきゃいけないんだろう。

 

なんで私、妹担当とかなっちゃってるんだろう。いや童顔だからなんだけど。分かってるけど。でも実際りおちゃんの方が私より年下なのに。ていうかりおちゃんはいいよねフキゲン担当とかゆって塩でも「むしろそれがいい」とか評価されるしなんなのフキゲン担当って。そもそもなんで私ここにいるんだろう、ただ読モやってられたらそれでよかったのに。最近ライブばっかで全然撮影行けてないじゃん。まどかとみぃほちゃんが単独でスタイルブック出すってまじなのかなー誌上投票じゃ私の方が上だったのに。出したいな、スタイルブック、私も。

 

そんな凛の暗澹たる気持ちをよそに、次々にパーテーションの隙間から凛と握手をしたいファンが現れ、数十秒後には消えていく。

 

 俺のこと好き?好きだよー!(お金落としてくれてるからね)

 

その髪型より違うのがいいな。えーー、どんなの好き?ポニテ?分かった、覚えとくね!(やるかどうかは知らないけど)

 

りんりんファンデ変えた?えっ変えてないよぉ?(ていうか私ファンデ使ってないし)

 

 頭の高い位置でツインテールに結ったふわふわに巻いた髪は、凛の翳る表情を隠してはくれないから、ひたすら笑顔を作り続けた。

 

全ての女の子がアイドルになれるこの時代、ネコも杓子もアイドルアイドルで数え切れないくらいの「アイドル」がひしめくこの状況下で、自分を見つけ出して推してくれるヲタのことを、凛は決して嫌いなわけではない。感謝もしている。しかし、ただただ、男ヲタたちと分かり合えないこと、握手会やチェキの撮影で彼らと「接触」するたびに、感情や肉体を搾取されるこの感覚にいつまでたっても慣れることが出来ずにいるだけなのだった。

 

ハナちゃんとか琴ちゃんは女の子のヲタが多くていいなぁ。

 

 ミニライブが終わり、ステージ上に握手会用のパーテーションが運び込まれているわずかな時間に、テントのような楽屋のなかで凛は小さく呟いた。その言葉に気づいた「ドラムと男前担当」のハナは、黙ったまま、少し申し訳なさそうな顔で凛の頭を撫でた。赤茶けた髪をベリーショートにしたハナは勿論、黒髪ロングをなびかせる、一重まぶたの大きな瞳が特徴の「ギターと姉貴担当」の琴にも多くの女の固定客がついていた。

 

なんで私、女ヲタ増えないんだろー…

ハナの手を頭にのせたまま呟くと、振り返った琴が凛の頬を摘みながら言う。

「でも凛にはあの人がいるじゃん、【ひーちゃん】だっけ?あの人好きでしょ、凛」

琴の細い指に頬を摘まれたまま、凛はこっくりと頷いた。そう、凛にも全く女のファンがいないわけではない。

 

 「凛ちゃんごめん遅くなった!」

 パーテーションから飛び出すようにして凛のブースに駆け込む一人の女性。

 「ひーちゃん!やっと来た!」

握手会用に設えられた長机の端まで駆けるようにして凛は彼女を出迎える。

黒いジャケットに同じく黒のパンツ、白いカットソーにヒールの低いパンプスを履いた、その女性こそが、数少ない凛の女ヲタ【ひーちゃん】である。

 

凛が彼女について知っていることは少ない。年齢も、血液型も、フルネームさえ知らない。

今日のような週末のイベントにも、仕事着然としたきっちりした格好で現れることが多いので、週末休みでない仕事をしているらしいということがかろうじて分かる程度だ。

他のヲタは自分のことを長々と書いた手紙を寄こしたりするが、彼女の手紙にはいつも、いかに彼女にとって凛が可愛いかということがひたすらに書き連ねてあるだけだった。封筒には、過去に凛がメディアに露出した際の写真がコラージュされていて、まだ「せーとものりんりん」になる前、ファッション誌の水着特集で撮ってもらったビキニ姿の凛がサイリウムの海を泳いでいるように加工された封筒さえあった。

彼女が凛のファンになったのは「せーとも」のメンバーとして活動をはじめてからなので、そうして昔のバックナンバーを探し、手に入れてくれる気持ちが、凛には嬉しかった。

 

 「ねぇ、今日ライブからいた?」

「ごめん仕事押してライブ観れなかった」

「だよね?めっちゃ探したのにいないんだもん」

「ごめん~~明日の対バンはちゃんと朝からいるよ!」

「ライブ夜からだし!」

 

 早口にまくし立てながら凛は【ひーちゃん】の手を握った。

ふたりともの手が熱い。

少し話したところで、握手会をスムーズに進行させるためのスタッフ…所謂「剥がし」…の手が【ひーちゃん】の肩にかかる。凛は鋭くスタッフの目を見つめ、ごくかすかに顎を振ってみせた。この人は、いいの。

 

 「ひーちゃん今日あと何回来る?」

「うーんあと2回?かな?ごめん時間なくて買い足せないや」

「絶対来てね、超待ってるからね!」

「うん、すぐ来るね!」

 

 手を離し、ブースから出て行く彼女を見送る。はしゃいだせいだろうか、体温が上がったようで、太腿の内側につけているバニラの香水が思い出したように香りたつ。

 

 握手会のほんの数十秒で、交わせる言葉はごく少ない。全然足りない、と凛は歯噛みする。

 

どこに住んでるの、ひーちゃんいまいくつなの、どうして私を推してくれるの。

私のどこが好きなの、こんなやる気ないのに、ベースもそんな上手じゃないのに、どうして私にお金払ってくれるの、私がアイドルじゃなくても好きなの、モデルだけの私でも見つけてくれたの。

 

ひーちゃん、ほんとうに私のこと好きなの?

 

聞きたいことも、知りたいことも山のようにあった。でもそのどれもが、余るほどの時間が与えられていたとしても、凛の口からは決して聞けない類のものばかりだった。

握手会も終盤に近づき、凛のブースを訪れる人も途切れがちになってくる。ブースの入り口に人の気配を感じるたび、凛はさっとそちらに目をやる。

 

「ひーちゃんだよぉ」

「ひーちゃん!」

「さっきさぁ、【ゆっきー】いたよ」

「え、だいぶ前に今日ラスト、って言ってたよ。まだいるんだ」

「【ゆっきー】今日も盲目だった?」

「『ちゅーしよ』ってめっちゃ顔近かった。ちょっとやだった」

「なにそれまじガチ恋名乗る資格ないね。怖かったね」

 

よしよし、と彼女の手が凛の頭を撫でる。

握手会が始まる前にハナにされたのと全く同じ仕草なのに、凛はどうにもいても立ってもいられない気持ちになった。いまが握手会中じゃなければ、髪を撫でる【ひーちゃん】の手に自分の手を重ねて、そのままほっぺに触ってもらうのに。息苦しくそう思いながら、でも握手会じゃなきゃ【ひーちゃん】には会えないんだ、と思い至り、さらに凛は息苦しく胸を喘がせる。

 

「…でもさぁ、ほんとあれだね」

「え?」

「あのさ、」

 

彼女が新しく何かを言いかけた瞬間、ブース内にいる剥がしスタッフに肩をゆるく押された。二人の手がほどけ、そのまま彼女はブース出口を目指しながら振り返り、心細く立ちすくむ凛に声をかけた。

「すぐ来るから!次ラスト!」

もうパーテーションの外に、凛の握手待機列はほぼないようで、本当に【ひーちゃん】はすぐに戻ってきた。

ひーちゃん、と呼んで差し出した凛の両手に【ひーちゃん】はするりと指を絡める。

 「さっきの続きだけどさ、【ゆっきー】もさ」

「うん?」

「ガチ恋名乗ってそういうこと言うなら、私だって言っていいよね?」

 指の絡む両手をぐっと自分の胸のあたりに引き寄せ、彼女はひとつ咳払いをしてから、凛の瞳を深くまで覗き込むように見つめながら言った。

 「だって、私だって凛ちゃんガチ恋だもん」

 目をしばたかせ、黙ってしまった凛を見て【ひーちゃん】は少しだけ寂しそうに笑い、ひどくいたずらっぽくこう続けた。

 

「ね、凛ちゃん。ちゅーしよ?」

「いいよ!!」

勢い込んで前のめりにそう答えた凛に、彼女が爆笑するのと、ブース内にいたスタッフがすっ飛んでくるのとが同時だった。

「よくないよー、アイドルでしょー」

「でも凛、ほんとにひーちゃん好きだよ」

「ひーちゃんもほんとに凛ちゃんが好きだよ」

「ほんとにほんと?」

「ガチ恋すぎて今までガチ恋名乗れなかったくらい好きだよ」

「えっ嬉しい……」

もはや凛は何を鎧うこともなく、何も考えず、感じたままを口にしていた。警戒した顔つきのスタッフが【ひーちゃん】の肩を掴んで凛から引き剥がし、パーテーションの向こうへ彼女の姿が消えていくのを見送ってから「あ、女ヲタに告られてるの見られたって、やばいかな?」と、ようやく思い当たる。

 しかし今日、凛の剥がしを担当していたスタッフの顔に凛は全く見覚えがない。

事務所の人間でも、レーベルの人間でもない。おそらく会場であるショッピングモール側の、下手すればこの日限りのバイトかもしれない。

面白おかしく凛の名前と共にSNSに書き込まれでもしたら少し迷惑だが、せーともと凛の名前にそこまで拡散力はないだろう。これがもしも男ヲタとの間に交わされた出来事なら、ユニットの知名度に関係なく炎上していたかもしれないが、女ヲタとアイドルの告白大会には、一部のファン以外食いつきそうもない。

 

……ひーちゃん、私のこと好きって言った。私も、ひーちゃん好きって言った。じゃあ、もう、動かなきゃ!動かなきゃ、嘘になる!

 

ふわふわのツインテールを振って、強くパーテーションの向こうを見つめる彼女が、普段めったに行わないエゴサーチから【ひーちゃん】のツイッターアカウントを特定し、告白の本意を確かめるため、直接コンタクトを取るのはこの夜のことである。

 

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昔書いた小説がメールの下書きから出てきたので載せてみました。

友達と出してた「百合人(ユリスト)」という同人誌に「せーとも」シリーズで他の話も書いてます。Amazonで買えるよ。

百合人―ユリスト―第2号

百合人―ユリスト―第2号